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次世代nRF54Lシリーズ: 消費電力をさらに削減 Petter Myhre May 27, 2025

このブログ記事では、電力消費の観点から見たnRF54Lシリーズの概要を説明します。nRF54LシリーズはnRF52シリーズの次の世代であるため、nRF52840 SoCと比較していきます。

22 nmプロセスノードも一役買っていますが、nRF54Lシリーズの電力消費低減は、この無線SoC/MCUの設計において、システムレベルの電力消費に総合的かつ意図的に焦点を当てた結果です。数十年にわたり蓄積された低消費電力設計の専門知識により、Nordicのエンジニアは、高速起動の超低消費電力オシレータ、漏れ電流の少ないSRAM、より高速な無線立ち上げとスイッチングが高速な無線モジュール、最も電力を消費しないスリープモードである「システムOFF」で動作可能なグローバルRTCなど、全体的に電力消費の低減を優先的に考慮しています。Nordicの開発者は、最適化されたドライバや無線プロトコル スタックなどの低消費電力ソフトウェアにも注力しています。

このブログ記事では、電力消費の観点から見たnRF54Lシリーズの概要を説明します。nRF54LシリーズはnRF52シリーズの次の世代であるため、nRF52840 SoCと比較していきます。改善内容は、人気の高いnRF52832を含む他のnRF52シリーズSoCでも同様です。nRF54Lシリーズの無線SoCはすべて同じ電力消費特性を持っており、RAMの容量でわずかな違いが出るだけです。この情報は、生産中、サンプリング中、サンプリング予定の他の無線SoC/MCUと比較する際にも役立つはずです。

最初にMCU機能の改善点、次に無線、Bluetooth LE、Matterについて見ていきましょう。最後に、自分でできる容易な計測方法を紹介します。

MCUの改善

処理効率

シナリオ

nRF54Lシリーズ

nRF52840

差異

CPUがNVMから
CoreMarkを実行

2.6 mA

3.3 mA

-21 %

処理効率

20 µA/MHz

(CPUがNVMからCoreMarkを
実行 / 128 MHz)

52 µA/MHz

(CPUがNVMからCoreMarkを
実行 / 64 MHz)

-62 %

nRF54Lシリーズは、CPUクロックを倍の128 MHzとしながら、アクティブ電流を3.3 mAから2.6 mAへと21%減らしました。また、μA/MHzで求められる処理効率も62%と大幅に向上しています。これらの改善は、特に演算負荷の高いアプリケーションで有益です。すなわち、より多くの処理をより短時間で行えるため、システムがスリープにある時間が増え、平均電流消費を削減できます。

スリープ

シナリオ

nRF54Lシリーズ

nRF52840

差異

システムON, 256 KB RAM保持

3.0 µA

2.35 µA

+28 %

システムON, RAM保持しない

0.7 µA

0.97 µA

-28 %

システムOFF, グローバルRTC復帰あり

0.8 µA

N/A*

N/A

システムOFF

0.6 µA

0.4 µA

+50 %

* nRF52840の場合、システムOFFではRTCを使用できません。RTCを復帰させるにはシステムONが必要であり、その場合1.5 μAを消費します。

nRF54Lシリーズは、いくつかの重要なシナリオでアクティブ電流とアイドル電流を大幅に低減しますが、一部の値はnRF52840よりも高くなっています。これは主に22 nmプロセスノードによる漏れ電流の増加が原因であり、特定のシナリオにおいてスリープ電流が若干増えます。しかし、nRF54LシリーズはシステムOFFでグローバルRTCが使用できるといった新機能も導入しています。それによりnRF52840より低消費電流を実現しており、多くのユースケースでより消費電流を低減したスリープが可能です。

無線の改善

シナリオ

nRF54Lシリーズ

nRF52840

差異

Bluetooth LE TX 1 Mbps 8 dBm

9.8 mA

16.4 mA

-40 %

Bluetooth LE TX 1 Mbps 0 dBm

4.8 mA

6.4 mA

-25 %

Bluetooth LE RX 1 Mbps

3.4 mA

6.4 mA

-47 %

nRF54Lシリーズは、送信モードと受信モードの両方で無線消費電力を大幅に改善しました。8 dBmで送信する場合でも、nRF52840に比べて消費電流が40%低減し、RX電流はほぼ半分です。これらの改善は、無線モジュールが頻繁に、あるいは長時間アクティブになるアプリケーションで、さらに重要です。

Bluetooth LEとMatterの改善

Bluetooth LEまたはMatter over Threadの消費電力を比較するには、Online Power Profiler for Bluetooth LEまたはOnline Power Profiler for Matterの使用をお勧めします。同じプロファイラでブラウザ ウィンドウを2つ開き、片方でnRF54L15を、もう一方でnRF52840を選択し、適切なパラメータを設定し、消費電流を直接比較してみましょう。下表にBluetooth LEの例を挙げます。

シナリオ

nRF54Lシリーズ

nRF52840

差異

アドバタイジング(TX/RX)設定に
変更なし

45 µA

94 µA

-52 %

8 dBmの無線TX出力を除き、
アドバタイジング(TX/RX)設定に
変更なし

63 µA

129 µA

-51 %

8 dBmの無線TX出力と20 Byteの
TXペイロードを除き、アドバタイジング
(TX/RX)設定に変更なし

109 µA

204 µA

-47 %

接続(ペリフェラル)設定に変更なし

26 µA

48 µA

-46 %

8 dBmの無線TX出力を除き、接続
(ペリフェラル)設定に変更なし

30 µA

55 µA

-46 %

8 dBmの無線TX出力と20 Byteの
TXペイロードを除き、接続(ペリフェラル)
設定に変更なし

46 µA

81 µA

-43 %

これらのBluetooth LEシナリオから、nRF54LシリーズはnRF52840に比べて平均消費電流を約半分に低減できることが分かります。無線モジュールを使うほどその差は広がります。

nPMファミリPMICとnRF54Lシリーズの組み合わせ

設計によっては、nRF54LシリーズをnPMファミリPMICと組み合わせることで、効率的な電力レギュレーションや、シップモードやハイバネーション モードなどのPMICが持つ省電力機能により、システム全体の電力消費をさらに低減できます。詳しくはPMICのセクションをご覧ください。

次のステップ

次のステップはnRF54L15 DKを入手し、Power Profiler Kit IIなどの安価なキットをで消費電力を計測することです。Bluetooth LEについては、nRF Connect SDKに含まれるペリフェラル パワープロファイル サンプルから始めることをお勧めします。このサンプルでは、Bluetooth LEスタックを通信に使用した場合の電力消費を計測できます。予想に近い結果が出るはずです。もしそうならない場合、DevZoneの技術サポートにお問い合わせください。

Matter over Threadに関する電力消費関連の詳細は、弊社のホワイトペーパー「Matter over Thread: Power Consumption and Battery Life」、特に「Estimation of Annual Power Consumption and Battery Lifetime (年間消費電力とバッテリ寿命の推定)」の章、およびオンデマンド ウェビナー「Developing Low-Power Matter Devices with nRF54L Series (nRF54Lを使用した低消費電力Matterデバイスの開発)」をお勧めします。

nRF54Lシリーズの電力消費改善の紹介が読者にとって有益であり、次のIoT製品に適した無線SoC選択の一助となれば幸いです。

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